NEC航空宇宙システムの研究開発・技術
NEC航空宇宙システムは、宇宙利活用や国家安全保障に資する様々な研究開発を行い、高度な技術を有しています。最近の取り組みの一例をご紹介します。
衛星データ処理
地球観測衛星は、数十kmから数百kmの広範囲を一度に観測できる同時性を持ち、一定の間隔により撮像できる周期性と、災害時にも影響を受けにくい耐災害性を有することが特長と言えます。これらの強みを活かし、新たな価値とビジネスチャンスを創出するために、私たちは日々研究を重ねています。
衛星画像利用の未来を拓く:革新的パンシャープン技術
パンシャープンとは可視光学衛星画像の合成処理のひとつで、高解像度白黒のパンクロマティック画像と低解像度カラーのマルチスペクトル画像から高解像度カラーの画像を合成する処理です。衛星画像を視認して地物の状況を調べる際によく用いられます。
当社では、データそのものではなく、人が視認する情報に着目し、「視認性」のよい高精彩パンシャープン画像を合成する技術を開発しています(特許6744317、特許7264483)。
この技術により、安全保障や災害発生時等の緊急性の高い状況において、パンシャープン画像を用いた迅速かつ的確な状況把握・意思決定を可能にします。今後さらに画質と処理速度を向上させ、衛星画像を利用した社会の発展に貢献します。
パンクロマティック画像(合成素の高解像度白黒画像)
パンシャープン処理画像
追跡・管制
衛星コンステレーションの構築などの新たな潮流が国際的に注目されています。NEC航空宇宙システムでは、JAXA等が所有する人工衛星の追跡・管制を支える地上システムのソフトウェアを開発してきた豊富な実績があります。この経験や知見を生かし、さらなる付加価値の創造を目指して、私たちは研究開発を加速させています。
宇宙の未来を支える:高精度な軌道計算技術
地球周回衛星では、ミッションに応じた最適な軌道が選定されますが、大気抵抗などの影響で軌道が変化します。また、月や惑星、小惑星に向かう探査機は、探査機ごとに異なる様々な影響を受け軌道が変化します。
当社では、これら軌道を変化させる様々な影響を考慮したうえで、ミッション遂行に最適な軌道を維持するための効率的な軌道制御量の算出や軌道計画の立案を行っています。これらの技術により、宇宙インフラの構築や科学技術の発展に貢献しています。
今後は、さらなる精度向上と新技術の開発を進め、多様な宇宙ミッションに対応する柔軟なシステム構築を目指します。
拡大する小惑星探査機「はやぶさ2」往路軌道 ©JAXA
「はやぶさ2」フライトイメージ ©JAXA
宇宙通信の要を担う:革新の地上局管制技術
地上局管制技術は、宇宙と地上間の通信インフラを効果的に管理し、安定した宇宙利用を実現するための要となる技術です。地上局に設置されたアンテナやRF機器の健全性を常に監視し、障害が発生した際には迅速な自動リカバリ制御を行うことにより安定した地上局の運用を確保します。
当社は、様々な地上局の運用ニーズに応じた柔軟な管制技術の開発にも注力しています。例えば、局構成の変化に対して監視・制御対象となる地上局設備の変更が必要ですが、これをデータベースの更新により対応できるようにします。また、制御シーケンスによる自動制御と監視設定を活用し地上局の運用を効率化します。さらに、地上局の運用状態や設備の健全性をWebブラウザ経由でリアルタイムに把握できるようにし場所を問わない柔軟な地上局の運用を実現します。
今後さらなる技術革新に挑み、グローバルな宇宙通信ネットワークの発展に貢献します。
拡大する地上局管制画面イメージ
人工衛星との送受信を担う大型パラボラアンテナ ©JAXA